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ソニーグループを買いたい「コンテンツ企業」の中に埋もれた半導体事業

企業分析
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先月、家族でオーストリアのウィーンに行ってきました。

海外旅行をすると、日本にいるときとは違った視点で日本企業を見ることができます。今回、ウィーンの街中で意外と目についたのがソニー製品でした。

街を歩いていると、若者がソニーのヘッドフォンを使っている姿を何度も見かけました。さらに、ウィーン郊外のショッピングモールにある家電量販店にも立ち寄ってみました。冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなど、いわゆる白物家電は中国・韓国メーカーの商品が中心。日本メーカーの存在感は以前と比べてかなり小さく感じました。

その一方で、テレビやオーディオなどの映像・音響分野ではソニー製品が目立っていました。

海外で実際に商品を見ていると、ソニーというブランドが持つ力を改めて感じます。

ソニーは「家電メーカー」から変わった

現在のソニーグループを昔のソニーと同じように「家電メーカー」と考えると、本質を見誤ると思テレビやオーディオ、カメラといったハードウェアは今でも重要ですが、現在のソニーが力を入れているのは、むしろその先にある**コンテンツやIP(知的財産)**です。

象徴的なのが映画です。

先月のウィーンでは、映画館でスパイダーマンの新作が上映され、駅のプラットフォームにはスパイダーマンを使った大きな広告が掲示されていました。

ソニーは20年以上前の2000年に米国の映画会社、コロンビア・ピクチャーズを傘下に収めました。現在では、スパイダーマンをはじめとした映画だけでなく、音楽、アニメ、ゲームなどにも事業領域を広げています。

特に興味深いのは、一つのIPを映画だけで終わらせないことです。映画、音楽、ゲーム、アニメ、配信など、ソニーグループが持つ複数の事業を組み合わせることで、一つのコンテンツから生み出せる価値を最大化しようとしています。ソニーが目指しているのは、単なる「モノを売る会社」から、「コンテンツとテクノロジーによって価値を生み出す会社」への転換なのだと思います。

金融事業をスピンオフしたソニー

ソニーの変化を象徴するもう一つの出来事が、金融事業のスピンオフです。

ソニーは2025年、金融事業をソニーグループ本体から切り離し、ソニーフィナンシャルグループを上場させました。

ソニーフィナンシャルグループには、

  • ソニー生命
  • ソニー損保
  • ソニー銀行

などが含まれています。

私自身もソニー銀行で住宅ローンを利用し、ソニー損保の火災保険にも加入しています。

身近なところでソニーの金融サービスを利用しているので、今回のスピンオフには少し複雑な気持ちもあります。しかし、投資家の立場から考えると、金融事業とエンターテインメント・テクノロジー事業を分離することには合理性があります。金融は金融で必要とされる資本政策があり、ゲーム、音楽、映画、半導体とは事業の性質が大きく異なるからです。ソニーが事業ポートフォリオの大胆な選択と集中をできる所に私は競争力があると感じています。

私がソニーで最も注目しているのは「半導体」

そんなソニーの中で、私が特に注目している事業があります。

I&SS(イメージング&センシング・ソリューション)事業です。

ソニーというと、

「PlayStation」

「スパイダーマン」

「ウォークマン」

「ヘッドフォン」

といった一般消費者向けの商品やコンテンツを思い浮かべる人が多いと思います。

しかし、ソニーには世界トップクラスの半導体事業があります。

それがCMOSイメージセンサーです。

スマートフォンのカメラで撮影した映像を電子データに変換するためには、イメージセンサーが必要です。そして用途はスマートフォンだけではありません。

  • 自動車
  • 監視カメラ
  • 工場の自動化
  • ロボット
  • 医療
  • AI

など、現実世界の情報をデジタル化するさまざまな分野で利用されています。

特に今後、工場の自動化やロボット、フィジカルAIが発展するほど、「現実世界を認識する目」の重要性は高まると考えています。その「目」にあたるのがイメージセンサーです。ソニーはこの分野で世界トップクラスのシェアを持っています。私は、この事業には今後も大きな成長余地があると考えています。

半導体株の株価は、すでに大きく上昇している

一方で、現在の株式市場を見ると半導体関連銘柄への期待は非常に高くなっています。AIやデータセンター需要の拡大によって、半導体業界では業績が急拡大している企業があります。

代表例がキオクシアです。ただし、キオクシアについては今回の比較から除外しました。業績が市場環境の急激な改善によって大きく変動しており、直近の営業利益をそのまま使うと、他社とのバリュエーション比較が歪んでしまうためです。

そこで、キオクシアを除いた主要な半導体関連銘柄について、時価総額、営業利益予想、時価総額÷営業利益、PER、PBRを比較してみました。

独自集計

今回取り上げた銘柄の時価総額加重平均では、
時価総額÷営業利益:約28倍
PBR:約11.7倍

となりました。

時価総額÷営業利益は一般的な株価指標ではありませんが、ソニーのI&SS(イメージセンサー)事業の営業利益の価値を見るうえで簡易的な指数として算出しました。

ソニーの中に「半導体企業」が埋もれている?

現在のソニーグループの時価総額は約23兆円。一方、ソニーの営業利益予想は約1兆7,200億円です。

単純に計算すると、

時価総額÷営業利益=約13.5倍

となります。また、PBRは約2.7倍です。先ほどの半導体関連銘柄の平均と比べると、かなり低い水準です。そこで、ソニーのI&SS事業について二つの可能性を考えてみました。


① 市場がI&SSを「半導体企業」として評価していない場合

I&SSの営業利益予想を4,200億円とし、先ほどの半導体関連銘柄の時価総額÷営業利益である28倍を適用します。すると、

4,200億円 × 28倍=約11.8兆円

となります。

I&SSを約11.8兆円の価値がある半導体事業として評価した場合、現在のソニーグループの価値にこれを組み入れると、私の試算では理論株価は4,909円になります。現在の株価3,885円に対して、約26%の上昇余地です。

この計算はかなり単純化していますが、「ソニーの中にあるI&SSを、半導体企業として評価し直すだけで、株価の見え方が変わる」という点は面白いと思います。


② 逆に、市場がすでにI&SSを半導体企業として評価している場合

では、現在の株価にすでにI&SSの価値が織り込まれていると仮定します。I&SSを約11.8兆円と評価すると、現在のソニー全体の時価総額約23.2兆円からI&SSを引いた、残りの事業価値は約11.4兆円になります。ソニーの営業利益予想1兆7,200億円のうち、I&SSを4,200億円とすると、I&SS以外の営業利益は約1兆3,000億円。つまり、I&SS以外の事業に約11.4兆円という評価になります。

この場合、I&SS以外の事業の
時価総額÷営業利益:約8.8倍
PER:約12.3倍
PBR:約1.8倍

となります。


どちらに転んでも、ソニーは面白い

ここが今回のソニー株分析で私が一番面白いと思っているところです。

市場がI&SSを半導体企業として評価していないなら、
→ I&SSを半導体企業として再評価する余地がある。

一方、市場がI&SSをすでに半導体企業として評価しているなら、
→ ゲーム、音楽、映画、アニメなど、I&SS以外の事業が比較的低いバリュエーションになっている。

つまり、どちらのケースを考えても、「現在のソニーの株価は、事業価値に対してそれほど高くないのではないか」と私は考えています。

例えばパナソニックHDのPBRも約1.8倍なので、I&SS以外のソニーのPBR1.8倍という数字は、決して極端に高いものではありません。むしろ、世界的なゲーム、音楽、映画、アニメ、半導体事業を持つ企業として考えると、面白い水準に見えます。

ソニーは「選択と集中」の先に何を目指すのか

大企業になると、事業が大きくなりすぎて、いつの間にか新しいことに挑戦する力を失ってしまうことがあります。企業が成功すると、その成功体験そのものが足かせになることもあります。その点、ソニーは金融事業をスピンオフするなど、事業ポートフォリオを整理しながら、エンターテインメントとテクノロジーに経営資源を集中させています。そして私が面白いと思うのが、

コンテンツ半導体

という、一見するとまったく違う事業を両方持っていることです。

映画や音楽、ゲームなどの「人間が楽しむコンテンツ」。そして、イメージセンサーによって現実世界をデジタル化する「テクノロジー」。この二つを持っている企業は、世界的に見てもそれほど多くありません。

私はソニーを100株購入したい

今回ウィーンを旅行して、ソニーのブランド力を改めて実感しました。

そして企業分析をしてみると、一般消費者から見えるソニー以上に、イメージセンサーという強力な半導体事業を持っていることが気になりました。

半導体関連銘柄のバリュエーションが大きく上昇している中で、ソニー全体のバリュエーションは相対的に落ち着いています。もちろん、イメージセンサーにもスマートフォン市場への依存や設備投資、半導体市況などのリスクがあります。また、今回の「時価総額÷営業利益」を使った計算も、あくまで簡易的な試算です。それでも、

「半導体企業としてのI&SS」
「世界的なゲーム事業」
「音楽・映画・アニメなどのコンテンツ事業」

を一つの会社としてまとめて考えたとき、現在の株価にはまだ評価されていない価値があるように感じます。私自身、普段使っているワイヤレスイヤホンもソニー製で、ソニーという会社には個人的な愛着もあります。好きな製品を作っている会社を調べてみたら、投資対象としても面白かったというのは、個人的には理想的な投資の入り口だと思っています。そこで今回は、ソニーグループを100株購入したいと思います。

今後、ソニーが「コンテンツ企業」としてだけでなく、イメージセンサーを核とした半導体企業としても再評価されるのか、長期的に見ていきたいと思います。

金融をスピンオフしたのに、I&SSはしないのか

金融事業はゲームや音楽、映画などのエンターテインメント事業との事業上のシナジーが小さく、必要とする資本も異なるため、分離する合理性がありました。一方、I&SSはソニーの「テクノロジー」の中核であり、カメラや映像、AI、ロボットなど、ソニーのクリエイティブ事業ともつながります。

また、半導体事業は巨額の設備投資が必要ですが、ソニーはTSMCとの協業などによって投資負担を抑える方向に進んでいます。I&SSを切り離して資金調達するよりも、ソニーグループの中に残して技術とコンテンツのシナジーを活かす方が、長期的には価値を高められると判断しているのではないでしょうか。

株価指数

3,885円(2026.9.5)

時価総額23,175,254百万円(09/04)
配当利回り(会社予想)0.90%(09/04)
1株配当(会社予想)35.00円(2027/03)
PER(会社予想)(連)18.92倍(09/04)
PBR(実績)(連)2.73倍(09/04)

EPS(会社予想)(連)205.37(2027/03)
BPS(実績)(連)1,425.17
ROE(実績)(連)-4.01%
自己資本比率(実績)(連)51.8%

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