「SBI証券のAI投資どう思いますか?」
最近、投資額を増やそうと考えている方から、SBI証券のAI投資について質問を受けました。
私は証券アナリストの資格を持っており、投資の勉強もしています。最近は企業分析をするときも、有価証券報告書、東証の開示資料、決算説明資料という順番で調べ、その後にChatGPTへ壁打ちする、という流れが増えました。
AIに過去の膨大な情報を整理させることで、自分では見落としていた情報や、開示資料だけでは気付かなかった視点が得られる。企業分析にも、かなり深みが出てきたと感じています。だからこそ、AIによる資産運用にも興味が湧きました。
SBI証券には「SBIラップ AI投資コース」と「ROBOPRO」という2つのAI投資サービスがあります。今回は公式資料を確認しながら、特に気になった点を考えてみます。
AI投資は何を比較対象にすべきか
SBIラップAI投資コースの実績を見ると、長期間で非常に良い運用成績に見えます。
ただし注意したいのが、サービス開始前の期間を含むバックテストです。
投資では、複数のアルゴリズムを試せば、その中には過去データに対して非常に良い成績を出すものが生まれます。そこで、成績の良かったモデルを商品化すれば、過去の実績は当然きれいに見えます。
これは「生存者バイアス」や「バックテストの罠」を考える必要がある部分です。100本それぞれ異なるアルゴリズムの投資信託を作り、最も利回りの高かった1本の投資信託のアルゴリズムを活かし運用利回りの根拠とすることもできます。
さらに私は、AI投資の比較対象として「一般的なロボアド」を置くことにも疑問を持ちました。
個人投資家が実際に比較するなら、
AI投資に手数料を払うのか、それとも低コストのオルカンを買うのか。
この比較の方が現実的ではないでしょうか。

ROBOPROとオルカンを比べてみる
ROBOPROは2020年1月15日にサービスを開始しています。
この日を起点に2026年7月31日までの運用実績を見ると、ROBOPROの累積リターンは+180.54%。
一方、同じ期間のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、おおよそ+215%となります。
つまり、AIを使い、相場環境に応じて資産配分を変え、高い手数料を支払って運用したROBOPROよりも、世界中の株式を淡々と保有するオルカンの方が良かったのです。
これは少し意外な結果でした。
もちろん、将来もオルカンが勝つとは限りません。しかし、AI運用を評価するなら「過去にいくら儲かったか」だけではなく、同じ期間に、低コストのインデックスをどれだけ上回ったのかを見る必要があります。
臨時リバランスは本当に暴落を回避できるのか
ROBOPROの特徴は、AIが市場環境を分析して、月1回のリバランスだけでなく、異常な相場環境では「臨時リバランス」を行うことです。
ここで私は一つ疑問を持ちました。
最近の株式市場は、2~3日で大きく下落した後、すぐに半値以上戻すような動きも珍しくありません。
もし暴落を認識してから株式を売却するのであれば、一番安いところで売ってしまう可能性はないのか?
と思ったのです。
ROBOPROは米国市場に上場するETFを組み合わせて運用しているため、投資信託の基準価額を待って売買する仕組みとは異なるものの、先物を使って株式をヘッジしているわけでもありません。基本的にはETFそのものを売買し、株式、債券、金、不動産などの配分を変更します。
それでも、AIが市場の変化を認識して売買を実行するまでのタイムラグは残ります。
急落の直後に急反発する「往復ビンタ」のような相場では、AIの判断が裏目に出る可能性もあります。
AIが相場を予測することで、相場そのものが動く?
ここからは少し違った視点です。最近の相場は、AI、アルゴリズム、クオンツ、CTAなど、多くの投資家が似た情報を利用しています。
「株価が上がる」と判断すれば買う。
買われて株価が上がれば、モメンタムが改善する。
さらに別のアルゴリズムが買う。
逆に悪材料が出れば、一斉に売る。
つまり、AIが相場を予測するだけでなく、AIを使った投資家の行動そのものが、相場の一方向への動きを強めている可能性があります。
これはROBOPROにとって追い風にも逆風にもなります。トレンドが続く相場なら、AIが流れを捉えることで利益を伸ばせる。
しかし、急反転すれば、同じような判断をした投資家が一斉にポジションを変え、「売ってから急反発する」ということも起こり得ます。個人投資家がコツコツ資産を積み上げ、相場の急変で含み益をすべて失う、ということになりかねないと感じます。
資産と時間を分散する
結局、私は投資において最も重要なのは、複雑な運用手法よりも時間を分散して買い続けることではないかと思っています。定期積立なら、株価が下がったときには同じ金額で多くの口数を買うことができます。そしてインデックス投資の最大の武器は、何と言っても低コストです。
年間1%の超過リターンを安定して得ることは、簡単ではありません。
そのため、AI投資に高い手数料を支払うのであれば、「AIだから儲かる」のではなく、オルカンを継続的に上回るだけの付加価値を本当に生み出せるのかを見なければいけないと思います。
また、投資額を増やす前に、日々の家計を見直して投資原資を生み出すことも重要です。
相場に一喜一憂せず、生活を安定させながら投資を続ける。
地味ですが、これが一番強い投資法なのかもしれません。
私は国内個別株に全力投資
翻って私はというと、オルカンや世界全資産均等型も保有していますが、金額は1万円以下。あくまで自分の投資成績と比較するためのベンチマークです。
資産の9割以上は国内個別株で運用しています。
日経新聞や経済誌、企業の記事を読むのが好きで、何より企業のビジネスそのものに興味があります。
経営者の考え、事業戦略、競合企業、業界動向。そして、その会社が10年後、20年後の日本をどう変えていくのか。
個別株を買うことは、私にとって「こんな未来になってほしい」という投票でもあります。
オカムラ食品工業が東北・北海道でサーモン養殖を拡大し、スシローやイオンに青森サーモンが並ぶ。タイムズカーでトヨタ車に乗って、家族で旅行に出かける。そんな、日々の生活を少し豊かにしてくれる企業を応援したい。
私にとって投資信託は少し退屈で、自分が望んでいない未来にも資金が流れてしまうことに、若干の抵抗があります。
とはいえ、今回調べてみてROBOPROは面白い商品だと感じました。
そこで、最低投資額の1.5万円だけROBOPROに投資してみようと思います。
私の国内個別株投資とROBOPRO。
さて、数年後にどちらの利回りが高くなっているでしょうか。
小さな1.5万円ですが、AIとの投資勝負を始めます。

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