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シラスウナギの漁獲好調、鰻の生態系を解説

日常の幸せ
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近年シラスウナギの不漁が続いており、シラスウナギ1匹当たり500-700円まで高騰していました。しかし、今年は稀に見るシラスウナギの漁獲が好調で、価格も10~20分の1まで値下がっています。今年の夏以降、鰻が安く食べられることに期待しています。

さて、日本人に馴染みの深い鰻ですが、その生態系は神秘的です。面白いと思ったところを断片的に紹介します。

鰻の生態系は?

日本の河川で成長した鰻は、川を下り、日本から遠く離れたマリアナ海峡付近で産卵します。1973年、東京大学海洋研究所がうなぎの産卵場調査に日本を出航しました。海でレプトケファルスという鰻の子どもを探し、より小さい個体が採取できる所すなわち産卵場所がマリアナ海峡付近だと特定しました。

マリアナ海峡で生まれたばかりのうなぎは、レプトケファルスという透明な虹色に光る姿をしています。鰻とは似つかわしい姿です。レプトケファルスはプランクトンの死骸などを吸収し、徐々に大きくなり、マリアナ海峡付近から黒潮に乗って、台湾・沖縄・九州・本州に流れてきます。このころにはシラスウナギと呼ばれる透明な鰻の形をしたものになります。運よく河口に到着したものが3-5年ほど成長して成魚となります。親鰻は黄ウナギとなり、秋に海に下り、またマリアナ海峡を目指します。

https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/attach/pdf/unagi-64.pdf

養殖されている鰻のほぼ99.9999%が天然のシラスウナギを採捕して、成長させています。鰻は湖や河川で産卵せず、誰一人として、自然環境で産卵している姿を見ている人がいません。もし、産卵姿を撮影できれば、ノーベル賞並みの大発見になるでしょう。

ウナギの祖先は深海由来

うなぎはあなごが見た目は近いですが、遺伝的には水深200-3,000mに生息するシギウナギ、ノコバウナギ、フウセンウナギなどと近縁です。かつて深海で生息していたウナギの中からエサが豊富な熱帯・亜熱帯の淡水域で成長する個体が生まれたようです。

遺伝上の名残で、マリアナ海峡の深海で産卵しているようです。また、マリアナ海峡での集団産卵には台湾・日本・中国・韓国の広い範囲に同一個体を拡大させることができ、より優秀な個体がマリアナ海峡に集結し、種の優位性を向上させてきたのだと思います。

川がダムで分断するとウナギはどうなる?

かつて琵琶湖には鰻が生息し、琵琶湖周辺にはウナギ屋さんも多くありました。うなぎは海でのみ産卵するので、大阪湾から淀川を登り、琵琶湖に辿り着いていました。今は淀川大堰、宇治の天ケ瀬ダム、瀬田川洗堰ができ、海から琵琶湖が断絶してしまいました。遡上できるような魚道を整備していますが、落差を考えると越えられる個体数は少なさそうです。

天ケ瀬ダム建設に伴う漁業補償の一環として滋賀県の水産課では琵琶湖一円に鰻を放流しているようです。鰻は海に戻り産卵するので、登るより下る方が楽だとはいえ、淀川から河口に向かう途中にはダムと堰が存在するので琵琶湖から海に下るのが極めて困難だと思います。また、放流された鰻を全匹漁獲できないので、効果は薄いと思います。

参考)滋賀県水産業

琵琶湖への種苗放流事業|滋賀県ホームページ

鰻の養殖都道府県ランキング

2019年の全国の養殖ウナギ生産量は、

1位 鹿児島県 7,086t
2位 愛知県 4,362t
3位 宮崎県 3,070t
4位 静岡県 1,534t

この4県で全国の90%以上を占めています。

鹿児島県で鰻養殖が盛んなのは、温暖な気候と桜島噴火による火山灰が多く降り積もるシラス台地に綺麗な地下水が豊富にあり養鰻に適しているためです。もともと静岡県で鰻養殖が始まり、近くの愛知県に鰻養殖が広がりました。その後、鹿児島での養殖が始まり、温暖な気候と地下水が相まって、当道府県ランキングナンバーワンの地位を確立しました。

鰻の輸入と規制

池入数量の上限規制

ウナギの資源保護の観点から2015年の漁期から、日本、中国、台湾、韓国の4か国により、池入数量管理を実施しています。日本でのシラスウナギの漁獲量が少ない年は、シラスウナギを輸入で補っています。

参考)ウナギをめぐる状況と対策について(水産庁)
https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/attach/pdf/unagi-15.pdf

日本のウナギ供給量

輸入量と養殖生産量がほぼ半々です。平成12年には輸入量が多く、約8割近くを占めていました。国内の養殖業者は平成10年頃からほぼ横ばいで推移しており、輸入量によって国内の供給量が大きく増減しています。中国では昭和60年ごろからヨーロッパウナギの養殖が急成長しましたが、ヨーロッパウナギの資源の減少とともに急激に衰退しています。平成21年からワシントン条約でヨーロッパウナギの貿易取引が制限されたことも減少の要因です。

参考)ウナギをめぐる状況と対策について(水産庁)
https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/attach/pdf/unagi-15.pdf

国内制度の問題

国内の養殖池に入ったシラスウナギと漁獲報告書を照らし合わせるとかなりの量の密漁や無報告での漁獲があります。シラスウナギを捕獲するためには、都道府県知事から特別採捕許可を受ける必要があり、密漁は法律違反です。

無報告漁獲の背景は、所得隠しのほか都道府県による販売価格の違いがあります。県内外のシラスウナギの販売価格に差がある場合に、無報告の分を県外に転売して、より多くの利益を得ようとする場合があります。ウナギの養殖が盛んな静岡県や高知県、宮崎県、鹿児島県では捕獲されたシラスウナギの県外への販売が制限されています。販売する側は、規則を破って高く購入してくれる都道府県に販売することで高い利幅を得られます。今の制度は密漁と過少報告を誘因し違法行為を促進してしまっています。

シラスウナギの密輸入

香港はシラスウナギ漁を行われていませんが、日本は香港からシラスウナギを輸入しています。

日本にシラスウナギが来遊するのは12-5月頃ですが、台湾は黒潮の上流に位置しているため、台湾には11月頃にシラスウナギが来遊します。日本の一部の地域では、この台湾の早い時期のシラスウナギを入手して、7月後半の土曜の丑の日までに出荷する「単年養殖」という形式の養殖が発達しています。一方で、日本で遅い時期に捕れたシラスウナギは、台湾へ輸出されて、現地での養殖に用いられていました。台湾から香港を経由する密輸が盛んになったのは、2007年10月に台湾がシラスウナギの輸出を制限した後です。台湾から日本への直接輸出が制限され、台湾から香港へとシラスウナギが密輸されるようになりました。台湾も報復として2007年以降に台湾への輸出が制限されました。

ウナギのワシントン条約の規制

EUはウナギの輸出国に許可書の発行を義務付けしようとしています。今年はシラスウナギが豊作でしたが、不足分は県外産や輸入で補っており、輸入シラスウナギの入手が困難になり、取引価格が高騰する可能性があるようです。許可書の義務付けはシラスウナギだけでなく、蒲焼などの加工品も対象となるようです。

流通業者・国内養殖業者が規制に反対しています。

しかし、私は賛成です。台湾・中国から闇ルートでシラスウナギが日本に輸入されており、許可書を発行し、透明性を高める意義は大きいです。

輸出入するシラスウナギは、輸送途中で死んでしまう個体も多いと思います。日本ブランドの方が、国内消費者に喜ばれ高値で売れるからといって、貴重なシラスウナギの数を減らしてしまう輸入という手段は減らすべきだと思います。また、輸入をあてにするのではなく、それぞれの国で持続可能なシラスウナギを確保するのが望ましいと思います。

鰻完全養殖のコストの高さ

シラスウナギの漁獲量の大幅減少から、鰻の完全養殖の研究が進んでいます。2002年にお親鰻から採卵した個体の仔魚育成に成功し、2010年に完全養殖のサイクルが確立しました。しかし、親鰻に成長ホルモンを注射したり、仔魚のエサ代も多く必要だったり、生産コストが高くなってしまいます。

しかし、シラスウナギの漁獲が安定しない以上、完全養殖に向けた取り組みが必要だと思います。鰻の生態系解明と安価な養殖技術の進歩に国の支援と国民の投資が必要だと思います。

参考)ウナギ種苗の商業化に向けた大漁生産システムの実証事業 水産庁

https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/attach/pdf/unagi-64.pdf

鰻銘柄期待

ヨンキュウ、大本命の期待している銘柄。鰻養鰻場を増強して、本格的に鰻事業を行っています。東都水産の株式売却益もあり、株主還元の強化にも期待しています。

鹿児島県沖永良部島で鰻の完全養殖を行っています。臨床試験の事業が本業ですが期待しています。

たれに定評があります。

関西にある宇名ととが好きです

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